『題名のない子守唄』 La Sconosciuta
途中に何度も挿入される、イレーナの過去の映像は、部分部分が現在の状況とシンクロしています。スーパーで買い物をしていても、メイドの面接を待っていても、困難に立ち向かうことを教えようとしていても、過去が脳裏をよぎるのです。
ひとつひとつの現在が、ひとつひとつの過去を呼び起こし、ひとつひとつの過去が、ひとつひとつの現在を引き起こしているのです。新しい生活へと踏み出したのに、忘れたい過去を切り離すことはできないと、突きつけられているように。
いくつかの不運が重なって不幸になったイレーナが関わった女性たちは、連鎖するように不幸になっていきます。冬のトリエステのどんよりとした空のように、湿気を帯びたトーンが陰鬱な気持ちを感じさせます。
イレーナが抱えていた過去は、男女間の格差、持てる者と持たざる者との経済格差、裏社会の組織、そして闇の市場の存在がもたらしたもの。彼女の行動は許容できる範囲を逸脱しているけれど、それをイレーナひとりの責任として彼女を責めることはできないでしょう。
むしろ気になったのはアダケル夫妻。子育ての時間も手間も他人任せにするのなら、なぜ養子縁組などしたのでしょう?養育者のいない子どもに対しての経済的なケアは重要だけれど、それだけなら「あしながおじさん」で十分なわけで、手元に子どもを置くことの意味を理解せずに養子縁組を望むなら、それは親子お互いにとって不幸だと思うのです。現実にこういう夫婦がいるのか、脚本の中のひずみなのかはわかりませんが、彼らの状況には説得力を感じませんでした。
メイドのジーナも、やりきれないような理由で不幸になってしまったのですが、彼女がことばを取り戻した後、さらになんらかの進展があるのではないかと期待していましたが、特になにもなかったですね。その部分は消化不良。
結末は「嘘から出た真」ということでしょうか。晴れやかに微笑む姿に、一条の光を見た思いです。
目を背けたくなるようなシーンもあり、R-15は納得。むしろR-18でもいいぐらい。それらのシーンは、現在と過去とを対比していく上での必要性がないわけじゃないので(もっとソフトなやり方もあるだろうけれど)、まあ納得できる範囲内。冒頭に監督から「結末を他の人に話さないでください」というメッセージがありますが、この部分が唯一最大の蛇足かな。
テア役のクララ・ドッセーナは可愛かったですねー。ほっぺがふっくらとしていて、目が大きくクリクリとしていて。また、いつか、別の作品で出会えたらいいな、と思う子役でした。
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鑑賞中に思い出したのは数年前のイタリア映画祭で観た『子供たち(Figli/Hijos)』。裏の組織と闇の市場の存在により、生き別れた双子のストーリーです。その年代には、同様の事件が複数あったのだそうです。やはり、カトリックということで、不妊治療などに制限があるんでしょうか?原因を辿っていくと、その辺に行き着きそうに思います。
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製作 / 2006 イタリア・フランス
監督 / ジュゼッペ・トルナトーレ
キャスト /
イレーナ … クセニア・ラパポルト
ムッファ … ミケーレ・プラチド
ヴァレリア・アダケル … クラウディア・ジェリーニ
テア・アダケル … クララ・ドッセーナ
弁護士 … マルゲリータ・ブイ
公式サイト
IMDb
cinecitta.com
allcinemaONLINE
ロケ地:トリエステ
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