『人生は、奇跡の詩』/La tigre e la neve
ロベルト・ベニーニの新作、『人生は、奇跡の詩<うた>』を観てきました。
前作『ピノッキオ』は、作品全体が暗喩のような内容でしたが、今回の作品は、表向きは『ライフ・イズ・ビューティフル』寄り。だけど、思いっきりファンタジー。
それを、ファンタジーと割り切ってリアリティのない部分に目をつぶれるか、悪く言えば、ベニーニのお遊びに付き合いきれるかどうかが、評価の分かれ目じゃないかと思います。
で、私はというと、付き合いきれるタイプ(笑)言霊という概念がイタリアにもあるのかは知りませんが、「ことばに宿る力」を感じる、良い作品だと思います。
(以下、覚書き。軽くネタバレありなので、未見の方はご注意を。)
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『ライフ・イズ・ビューティフル』の伏線の張り方も見事だったけれど、この作品もその点は負けず劣らず。娘たちをサーカスへ連れて行ったことも、病院に泥棒が入ることも、上着を取り違える偶然も。いくつもの張り巡らされた伏線がすべて、ヴィットリアへと収束していくストーリーは、なかなかのもの。きっとアッティリオの家族、ことにヴィットリアにとっては、彼は最高にかっこ悪くて愛情表現も不器用(だって、一番努力した部分は黙ってるんだから)なんだけれど、それでも最愛の人なんじゃないかな、というのが最後の彼女の表情から伝わってきます。
映像では、街中に舞う綿毛をワイパーで飛ばしたときにひらける視界の中に見えたもの、そして涙のように見えるペンダントトップが印象的でした。この綿毛のシーンと、ペンダントに気づいた後のシーン、どちらもヴィットリアの表情が本当に綺麗で、驚きと愛されることの幸せを、表情だけで見事に表現していたと思います。
結論としては、ベニーニ自身もテーマについてあれこれ言っているけれど、実のところ、「いかにニコレッタ・ブラスキが素敵な女性か」ということを表現することが彼の真の目的なんだろうと、私は思っております。この作品に限らず。
そう考えると、作品の中で一見主たるテーマのひとつのように見える「戦争」というモチーフは、それがもたらす悲惨さや矛盾を知らしめるという副次効果はあるにせよ、単に「極限状態」という表現の一手段であったに過ぎないのではないかと思えてきます。

人生は、奇跡の詩
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ところで、劇場で観た予告編のこと。
『ヘンダーソン夫人の贈り物』の予告編が流れたのですが、主演のジュディ・デンチ、彼女の話し方を聞くと「イギリスだなあ~」と感じますね。久々にイギリス英語を聞いた気がします。。。。そういえば、最近、イギリス映画を観てません。
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