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10/09/05

スクリーンの向こう側・第4回:『ぼくは怖くない』(前編)

ぼくは怖くない南イタリアを舞台にした映画、といったところで『明日を夢見て』『親愛なる日記』『情事』と、シチリアを巡る映画を3本取り上げました。シチリアを舞台にした作品や、意外なところでシチリアロケが挿入されている(他の都市が舞台なのにロケだけはシチリア)作品など、まだまだあるのですが、そろそろ半島に上陸しなければいけませんね。

さて、今回はイタリア半島の”土踏まず”、バジリカータ州が舞台の『ぼくは怖くない』をご紹介します。

舞台はプーリア州とバジリカータ州の州境に位置するメルフィ。わずか5家族だけの小さな村での話です。物語は主人公の少年・ミケーレが、仲間との遊び場所のひとつである廃屋の裏手に穴をみつけたことから始まります。偶然みつけたその穴には、フィリッポという少年が監禁されていました。やがて、ミケーレは、その少年についての秘密を知ってしまい、苦悩することになります。

村から少しはなれたところにある廃屋まで、ミケーレと仲間たちは風が渡る麦畑を自転車で駆け抜けていきます。この風景が本当に美しいんです!スクリーンいっぱいに広がる麦畑はまさに黄金色。その麦畑を風がなでつけると、まるで海にさざ波が立っているようにさえ見えるほど。広大な麦畑を見ていると、時間の流れさえ緩やかに思えてきます。

でも、実際には、麦畑が黄金色に染まる時期はわずか1週間しかないため、標高の低い場所の畑で撮影を開始し、徐々に高い場所へと移りながら大急ぎで撮影したのだそうです。時には、農家の人々から「もう収穫しても構わないか」と催促されることもあったとか。

イタリアを旅行するとなると、都市部やリゾートに滞在することになりますから、アグリツーリズモでの滞在でもなければ、こういった風景は移動中に垣間見る程度ではありませんか?(原作者のアンマニーティも、ドライブ中に見かけた麦畑から着想を得たそうです。)ですから、都市部でもリゾートでもなく、世界遺産に指定されるような風光明媚な場所でもないけれど、遠くまで広がる麦畑は、イタリアの日常を知る人たちだけが味わえる美しさではないかと思います。

映画の舞台に憧れてイタリアを訪れるのも、映画を見ながらイタリア旅行の思い出を反芻するのも楽しいものですが、実際には訪れる機会のなさそうな場所を、スクリーンで味わうというのは、映画だからこそできる楽しみ方ですよね。

ミケーレたちが駆け抜ける、海を思わせる広大な麦畑は、足を踏み入れると子どもの胸ほどの高さがあります。麦畑はただ穏やかに美しいだけではなく、美しい麦の穂の下に、例えそこに穴があろうと、動物が潜んでいようとわからない、南イタリアの明るい太陽に照らされていながらも、見えない世界を隠しています。同じように、大人たちの世界にも、笑顔で交わす挨拶や、楽しい旅の話の裏側に、昨日までのミケーレには想像もできなかった思惑が渦巻いているのです。


後編に続く)
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